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土台|人間理解

アンケートは、嘘をつく。
――「言うこと」と「やること」のズレに本音が出る

感情設計の教科書|第1回(全6回)

アンケートで「安ければ買います」と答えた人が、翌週、その3倍の値段の商品を買っていく。 現場でセールスをしたことがある人なら、一度はこの光景を見ているはずです。 お客さんが嘘つきなのではありません。人は、自分の本音を言葉にできないだけです。

リサーチが「情報収集」で終わる人、「人間理解」までいく人

売れない導線を診断すると、ほとんどの場合、原因はコピーや広告より手前にあります。 土台のリサーチが「情報収集」で止まっているのです。 年齢、性別、悩みキーワード、競合の価格……。データは集まっている。 でも、そのお客さんが「どんな瞬間に、何を感じて、なぜ動けないのか」には答えられない。

感情設計では、リサーチをこう定義し直します。 リサーチとは情報収集ではなく、人間理解である。 集めるべきはデータではなく、お客さんの頭の中にある“心の声の語彙”です。

本音は「建前」ではなく「行動」に出る

人の発言には、建前・本音・行動の3層があります。 アンケートやインタビューで取れるのは、多くの場合いちばん外側の建前です。 だから優れたリサーチャーは、言葉を集めながら、必ず行動と突き合わせます。

「健康のために運動したい」と言いながら、ジムの契約より先にマッサージを予約する。 「勉強のため」と言いながら、買った本は積んだまま。 このズレは、責めるところではありません。宝の山です。 ズレの中にこそ、「本当は何を避けたくて、本当は何が欲しいのか」が埋まっています。

POINT 「言うこと」と「やること」がズレたら、正しいのはいつも「やること」のほう。 行動だけが、財布と時間を実際に動かした本音の記録です。

“具体”に潜れているかのチェックライン

人間理解がどこまで進んだかは、言葉の解像度でわかります。 「膝が痛い人がターゲットです」で止まっていたら、まだ情報収集です。

膝が痛い人は、のぼりの階段より「下りの階段」が辛い。
――ここまで潜れたとき、初めて言葉が刺さり始める。

下りが辛いと知っている書き手の文章は、「駅の下りエスカレーターを探してしまう自分」を描写できます。 読んだ本人は思うわけです。「なんで私の毎日を知ってるの?」と。 この驚きが、次の段「なんだこれ?」の入り口になります。

今日からできる、本音の掘り方3つ

  1. 「なぜ」ではなく「場面」を聞く。「なぜ買ったんですか」への答えは建前になりがち。「買う直前、何をしていましたか」「誰の顔が浮かびましたか」と場面を聞くと、行動の記憶から本音がこぼれます。
  2. ビフォー行動を観察する。あなたの商品に来る前に、お客さんが何で解決しようとして、なぜ挫折したか。挫折の履歴は、不安の在庫リストそのものです。
  3. ズレ日記をつける。お客さんの「言ったこと」と「やったこと」が食い違った瞬間をメモし続ける。10個たまる頃には、あなたは業界の平均より深くお客さんを理解しています。

感情設計キャンバスの最下段が「人間理解」なのは、飾りではありません。 この土台の上にしか、残り5段は積めない。 逆に言えば、ここが深い人は、上の段の言葉づくりが一気に楽になります。

掘った本音は、1枚の地図に書き込んでください。

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